映画『”記憶”に生きる』について

 今年の二月にさいたま市の某地区のNPO団体などに向けて映画『”記憶”に生きる』の上映会のパンフレットを配布したところ、後援していただいたさいたま市の市役所や私どもに多くのクレームが入り、結局、後援をあきらめることになりました。

 この映画は、わたしどもが半年前から計画していたもので、日本領事館前の慰安婦像の問題に関連して上映する意図はまったくありません。わたしたちは、2015年6月7日に日比谷コンベンションホールにて行われた映画完成披露記念上映会に行きました。会場は満席でした。そして、この映画は、その後いろいろなところで上映されました。

 映画を観るまでは、元慰安婦の方といえば、テレビや新聞等で取り上げられるような怒りと悲しみをあらわにして訴える姿を想像していたのですが、映画に登場したのは、日本の年寄りとまったく変わらないふつうの人たちでした。彼女らは、自分たちのつらい立場を淡々と土井監督にしゃべっていくのですが、事実を認めてほしいということ以外に何も要求はせず、日本人に対して寛容でやさしいのです。その寛容な心に対して、自分たちが恥ずかしくなりました。

 それから一年すぎて、まださいたま市で上映されていないことを知り、さいたま市民にでも見てもらおうと今回の企画をした次第です。

 わたしたちは、映画を上映する前に、実際に韓国へ行ってきました。行く一か月前にハングル語に取り組み、少しでも韓国そして韓国人を理解しようとしました。ことばはなかなか覚えるのが難しかったですが、道がわからなくうろうろしていたら、多くの見知らぬ韓国人がどうしたのかとたずねてきます。地図を見ていると、必ず誰かが近寄ってくるのです。そして、道を教えるとなると、目的地まで一緒に案内してくれるのです。電車で立っていると席をゆずってくれるし、いろいろ韓国人のやさしさや親切な行為に出会いました。自分がこれまで持っていた韓国人に対しての偏見は、いったい何だっただろうかと苦悶しました。この映画は、わたしどもにとって、人生の新しい道案内にもなってくれたのです。だから、わたしたちは、この映画を観た人たちが、そのような経験をしてくれるかもしれないと思って上映するのです。みなさまのご理解および温かいご支援のほど、よろしくお願いします。最後に、批判をいただいた新聞の中でも、われわれに勇気をくれた2月22日付の朝日新聞の記事をご紹介します。

 

チネマ・カプチーノ代表 森内伸治

 2017年3月4日